トランザクションレンディングとは?フィンテックで実現する融資サービス
執筆者:川原裕也 更新:
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昨今、ニュースや新聞記事を見ていると「フィンテック」という言葉を良く見かけるようになりました。
フィンテックとは「Finance(金融)+Technology(テクノロジー)」を合わせた造語で、最新のIT技術を金融の分野に取り込むことで実現するサービスの総称です。
その最も代表的なものとして「ビットコイン(仮想通貨)」や「ブロックチェーン」と呼ばれるものがありますが、自営業者や中小企業経営者が押さえておきたいキーワードの一つとして「トランザクションレンディング」というものがあります。
新たな資金調達の方法となるトランザクションレンディングとは一体なんなのか?
わかりやすく解説します。
目次
トランザクションレンディングとは
銀行から融資を受ける際のデメリットには以下のようなものがあります。
- 銀行が実績を評価してくれず融資が受けられない
- 審査期間が長く融資までに時間がかかる
- 決算書過去3期分など、提出する書類が多い
これらの問題をすべて解決した融資サービスがあるとしたら、利用メリットは大きいですよね。
「実績を正当に評価してくれて、審査期間が短く、決算書などの提出も不要」、これがトランザクションレンディングの特徴です。
トランザクションレンディングの意味を理解すると全容が見えてきます。
トランザクションとは、商取引、売買、執行、取扱、議事録などの意味を持つ英単語。
つまり「トランザクション」とは取引履歴のことです。トランザクションという言葉自体がIT業界で使われる用語なので、主にネット通販やECサイトのネットでの取引履歴という認識の方が近いと思います。
また「レンディング」は「融資」のことを意味します。
これらの言葉を組み合わせると、トランザクションレンディングとは「ネットの取引履歴(売上実績)を根拠とした融資サービス」であることがわかります。
最近は、トランザクションレンディングのことを「データレンディング」と呼ぶケースも増えています。
データレンディングとは、過去の取引履歴(トランザクション)や、信用スコア(売上や利益など)から、総合的に審査する融資方法です。
基本的には同義ですが、データレンディングはトランザクションレンディングよりもより広い範囲での融資方法を示しています。
決済会社は膨大な取引データを保有している
ネット通販サイトを運営するには、クレジットカードシステムやショッピングカートシステムの導入が不可欠です。これらのサービスを提供している代表的な会社といえば、
- PayPal(オンライン決済大手)
- GMOペイメントゲートウェイ(決済代行大手)
- MakeShop(上記のGMOグループ会社)
- 楽天(ネット通販大手)
- Amazon(ネット通販大手)
- Square(スマホを使ったカード決済システム提供)
- STORES決済
などですよね。
ネット通販サイトを運営している事業者なら、こういった会社との取引があると思います。
そして重要なのは、決済サービスを提供しているこれらの会社は、私たちのECサイトの売上データを保有しているという事実です。
売上データは嘘をつかない
日々の売上データは嘘をつきません。
もちろん、嘘の売上データを報告して実績があるように見せかける事業者もいるかもしれません。
しかしECサイトの場合、そもそも日々の売上データを管理しているのが上記のような決済サービスの提供会社なので、彼らはとても信頼性の高い日々の売上データを入手・保有することができるのです。
そして、それらの売上データを元にして「利率」と「貸出限度額」を判断するのがトランザクションレンディングの特徴の一つです。
自営業者が融資の申込をする前から、常に売上データが蓄積されているので、審査期間は短いです。
また、決算書を提出しなくてもリアルタイムの売上実績が把握できているので、書類の用意も不要。さらに日々のデータは信頼性が高いものなので、融資対象となる企業の正当な評価・融資後のモニタリングができるわけです。
例えば、住信SBIネット銀行は最短即日融資が可能な「dayta(デイタ)」を提供しています。
売上が担保となり、売上から返済
トランザクションレンディングのもう一つの特徴として、無担保・無保証で融資が受けられるというものがあります。
資金調達をするにあたって担保を用意したり連帯保証人を用意する必要はありません。
こういった特徴を踏まえると、お金を借りる側にとってはとてもメリットのあるサービスだということがわかりますよね。
しかし一方で、トランザクションレンディングは融資を行う側にもメリットがあります。
それは、日々の売上が実質的な担保となり、日々の売上から融資額の返済が行われるからです。
決済代行会社は、売上金の払い戻しが行われるまでの間、私たちの売上金を預かっているので、もし返済遅延が発生しても売上から融資額の回収ができ、取りっぱぐれがありません。
代表的なトランザクションレンディングの比較
続いて、現在トランザクションレンディングを提供している会社を比較してみます。(2019年4月時点の情報です)
サービス名 | 融資限度額 | 借入利率 | 審査期間 | 決算書 | 担保・保証人 |
---|---|---|---|---|---|
dayta(デイタ) | 最大3,000万円 | 年率1.999%~7.999% | 最短当日 | 不要 | 不要 |
Amazonレンディング | 最大5,000万円 | 年率8.9%~13.9% | 最短5営業日 | 不要 | 不要 |
GMOイプシロン トランザクションレンディング | 最大5,000万円 | 年率6.0%~13.5% | 最短5営業日 | 不要 | 不要 |
楽天スーパービジネスローン エクスプレス | 最大1,500万円 | 年率3.0%~14.5% | 最短翌営業日 | 不要 | 不要 |
トランザクションレンディング以外のオンライン融資サービス。
サービス名 | 融資限度額 | 借入利率 | 審査期間 | 決算書 | 担保・保証人 |
---|---|---|---|---|---|
楽天スーパービジネスローン | 最大3,000万円 | 年率3.0%~15.0% | 最短3営業日 | 必要 | 原則不要 |
PayPay銀行 ビジネスローン | 最大3,000万円 | 年率1.45%~13.75% | 最短翌日 | 不要 | 不要 |
dayta(デイタ)
「dayta(デイタ)」は、住信SBIネット銀行が展開するトランザクションレンディングです。
「フィンテック」、「トランザクションレンディング」をかなり意識して設計されており、
- 最大3,000万円の融資
- 年1.999%~年7.999%の固定金利
- 最短即日の融資
という圧倒的なスペックを提供しています。
daytaは最短即日融資ができる点で、他のトランザクションレンディングを凌駕しています。
利用対象者となるのは、「住信SBIネット銀行の法人口座を開設しており、一定期間利用している方」です。
住信SBIネット銀行の法人口座が必要となるため、個人事業主の方は利用できません。
daytaの特徴は、融資可能条件を毎月メールでお知らせしてくれる点にあります。
わざわざ融資の申込みをしなくても、住信SBIネット銀行法人口座の利用状況から、「今のあなたには、この利率でこれくらい融資できますよ」と教えてくれるのです。
以前は、決済サービス「ZEUS(ゼウス)」向けに商品を提供していましたが、現在は提携商品の取扱を終了しています。
また、以前はSBIグループの「SBI AXIS」が商品を提供していましたが、現在は住信SBIネット銀行が直接融資する方式になりました。
Amazonレンディング
ネット通販大手のAmazonが提供する「Amazonレンディング」。
Amazonマーケットプレイスに参加している法人販売事業者だけが対象ですが、初回申込は最短5営業日、2回目以降は最短3営業日のスピード融資を実現しています。
融資可能額は10万円~5,000万円までとなっており、借入利率は年率8.9%~13.9%です。
毎月の返済は、販売事業者のAmazonのアカウントから引き落とし、繰上返済手数料は無料です。
GMOイプシロン トランザクションレンディング
GMOペイメントゲートウェイやMakeShopといった様々な決済サービスを提供するGMOグループのオンライン融資サービスです。
GMOイプシロン加盟店限定のサービスとなりますが、法人だけでなく個人加盟店も利用できるのが大きな特徴。
最短5営業日で融資が行われ、返済は日々の売上から相殺する形で行われます。
融資限度額と利率については、法人と個人で若干の違いがあります。
法人加盟店は30万円~5,000万円、年率3.5%~12.0%、個人加盟店は15万円~5,000万円、年率6.0%~13.5%となっています。
楽天スーパービジネスローン エクスプレス
楽天カードが展開している「楽天スーパービジネスローン エクスプレス」は、楽天市場への出店事業者だけが利用できる融資サービスです。
最短翌営業日の融資が可能ですが、借入限度額は最大1,500万円に限定されています。また、融資利率は年率3.0%~14.5%です。
楽天カードの決済代行システム「R-Card Plus(アールカードプラス)」や「楽天ペイ(楽天市場決済)」の売上入金から借入額が返済される仕組みです。
STORES決済
STORES決済は、スマホやタブレットで簡単にクレジットカード決済を導入できるサービスを提供している会社です。
クレジットカード決済を通じて多くの取引状況を把握しているため、トランザクションレンディングとの親和性が高いです。
STORES決済では、トランザクションレンディング事業をはじめるにあたって、人工知能(AI)を使った与信モデルのプロトタイプを開発したと発表しています。
カード決済データを活用した融資サービスは、すでにSTORES決済の同業他社であるSquareが米国で実施しています。おそらく、Squareも近い将来日本でレンディング事業に参入してくると思います。
CAMPFIRE(キャンプファイア)
購入型クラウドファンディングで評判のCAMPFIRE(キャンプファイア)は、「CAMPFIRE Bank」として同社のサービスを利用している事業者向けに融資を行っています。
融資可否の判断が難しくても購入型クラウドファンディングの審査を人工知能によって自動化することは可能だと、代表の家入一真氏は語っています。
融資額は最大200万円までと小さめですが、オンライン簡潔で最長12ヶ月の融資に申し込むことが可能です。
※CAMPFIRE Bankはサービス終了となりました。
その他
売上から返済が行われるトランザクションレンディングの仕組みとは異なりますが、
といった通常のオンライン融資サービスも存在します。
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