労働分配率は会社の給料水準を判断する指標、売上高人件費率との違いは?

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働く社員

会社を経営する側にとって大きな費用負担となるのが従業員への給与です。

社員を雇うことは雇用を生み出すという意味でも価値のあることです。

しかし、従業員への給与の他にも、社会保険料の会社負担分や、社員人数分のデスクスペースが確保できるオフィス、事務機器などが必要です。

派遣社員や契約社員、アルバイトを雇う方法もありますが、正社員はそう簡単にリストラすることもできません。

従業員を増やすことは、会社の規模拡大に貢献してくれる一方で、社員が増えれば増えるほど会社の負担が増大するのは言うまでもありません。

そうした中で従業員の給与をどれくらいの水準に設定するべきなのかは、経営者としても頭を抱えるところです。

働く側(従業員)にとっては、常に給与アップを望みたいところですが、現在の給与が他の会社と比較して高いのか安いのかも気になると思います。

そこで役立つのが「労働分配率」という経営指標です。

労働分配率は適切な人件費を決める際に役立ちます。

つまり、労働分配率を根拠にして人件費を決定すれば、会社側にとっても従業員側にとっても納得できる給与が算出できるのです。

労働分配率とは?

質問

Wikipediaによると労働分配率は下記のように定義されています。

企業において生産された付加価値全体のうちの、どれだけが労働者に還元されているかを示す割合。これは「人件費/付加価値」で算出された%で表す。

出典:Wikipedia

上記の通り、労働分配率の計算式は「労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値額」です。

ここで言う「付加価値額」とは「会社の粗利益(売上 - 原価)」のことです。粗利益は別名「売上総利益」とも言います。

一方で、「人件費」は下記のもの含んだ数値となります。

  • 従業員の給与
  • 従業員の賞与
  • 社会保険料(会社負担分)
  • 雇用保険料
  • 福利厚生費
  • 退職金

社会保険料(会社負担分)」は法定福利費に該当する費用項目です。雇用保険料は元々、全額会社負担です。

労働分配率の平均は40%~70%

労働分配率は、会社側にとっては小さいほど良い、働く側にとっては大きいほど良いということになります。

日本の企業の労働分配率は平均40%~70%と言われていますが、当然業界によってバラつきがありますので、一概には言えません。

上場企業の決算書などには費用項目が記載されていますから、類似業種の上場企業と比較してみることが大切です。

一般的には、40%~50%の範囲なら普通、30%以下なら優秀、70%を超えるならその理由を考える必要があります。

参考までに、中小企業白書の2017年度のデータから、労働分配率の業種ごとの目安を記載しておきます。

業種 労働分配率
全業種 67.94%
建設業 69.25%
製造業 69.82%
情報通信業 74.62%
運輸業、郵便業 74.99%
卸売業 63.74%
小売業 67.05%
不動産業、物品賃貸業 37.91%
学術研究、専門・技術サービス業 71.70%
宿泊業、飲食サービス業 71.26%
生活関連サービス業、娯楽業 57.94%
サービス業(他に分類されないもの) 82.47%

出典:中小企業庁 中小企業白書2019(2017年度データ)

上記を見てもわかる通り、労働分配率は業種ごとに大きく異なっており、中には80%を超えている業種もあります。

数値を改善するには?

社長と秘書

類似企業の業界平均と比較して、自社の労働分配率が高すぎる(または低すぎる)場合にはどうすればよいか。

社員の給与を上げたり下げたりする以外にも労働分配率を改善する方法はあります。

労働分配率を下げる方法
現在、自社の労働分配率が業界平均よりも高くなっている場合は、指標の引き下げを検討します。

給与を下げてしまう方法が一番早いのですが、それでは従業員の納得を得られない可能性が極めて高いです。

労働分配率を下げるには「経営効率を上げる」のが一番です。

「労働分配率 = 人件費 ÷ 売上総利益」なので、人件費を据え置いたまま、売上を高める方法を考える。

つまり、従業員1人あたりが稼ぐ売上総利益を高めることができれば、相対的に労働分配率は下がります。

それでも難しい場合は、給与を引き下げる代わりに福利厚生費を下げるなど別の方法を考えます。

福利厚生費は増減の調整が行いやすいので、経営環境に合わせて社員への還元を増やしたり減らしたりしやすいです。

労働分配率を上げる方法
自社の労働分配率が業界平均よりも低い場合は、指標を引き上げます。

労働分配率を上げる方法は簡単で、単純に従業員への還元率を増やせば良いのです。

しかし、給与で還元してしまうと経営環境が悪化した時に大きな負担になりがちです。

労働分配率が適正となるように「賞与」を増やしたり、福利厚生を充実させることでも、社員への還元を高めることができます。

「余力のあるお金をどこに、どういった形で還元するか?」これが検討事項となります。

売上高人件費率という指標も

社員

労働分配率と合わせて、人件費を決める上で役立つ指標とされているのが「売上高人件費率」です。

計算方法は「売上高人件費率 = 人件費 ÷ 売上高」です。

ここで言う「人件費」は先ほどの労働分配率と同じく、法定福利費や福利厚生費などを含んだ値です。

売上高人件費率も業界平均と比較し、労働分配率と合わせて従業員の給与を決めていくのがおすすめです。

労働分配率のまとめ

女性社員

・労働分配率を同業他社(上場企業など)と比較することで、適切な給与を設定することができる

・計算式は「人件費 ÷ 粗利」となり、人件費には法定福利費や福利厚生費なども含める

・数値の改善においては、従業員の給与を下げたりするよりも、経営効率を高めることによって労働分配率を下げるのがベスト

・類似指標の売上高人件費率も合わせて参考にするとよい

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この記事の執筆者

執筆者の詳細プロフィール
26歳の時に右も左もわからない状態で個人事業主になりました。2年後、株式会社クートンを設立し、現在10期目です。「いい人」がたくさんいる世界の実現が目標です。「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」 - アインシュタイン 姉妹サイト「1億人の投資術」でも記事を書いています。

より良い情報をお届けするため、川原裕也 がメンテナンスを担当いたしました。( 更新)

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