個人事業主になるには?開業届の出し方と必要書類のまとめ
執筆者:川原裕也 更新:
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最初に起業をするなら個人事業主がおすすめです。
会社設立には開業費用が数十万円必要ですし、手続きも面倒です。また、万が一廃業してしまった場合の精算手続きも大変です。
個人事業主であれば、開業も廃業も簡単に行えますし、コストをかけることなく事業が行えます。
私自身も、まったくの無知識の状態から1ヶ月たらずで開業届を提出し、個人事業主になりました。自営業になるのってそれくらい簡単なことです。
今回は、個人事業主になるために必要な書類と開業届の提出方法についてまとめます。
個人事業主の開業で提出すべき書類
まず、開業するための必要書類をまとめておきたいと思います。
とはいっても、実は個人事業主になるために必要な書類は1つもないというのが正しい答えです。
「今日から俺は個人事業主だ!」と名乗ったら、その瞬間から誰でも個人事業主になれます。これ、ウソのような本当の話です。
しかし、自分が自営業としてやっていくというモチベーションを保つためにも書類は出しておきたいところ。開業届などの書類を提出しておくことで得られるメリットもあります。
個人事業の開廃業等届出書(開業届)
個人事業の開廃業等届出書は、いわゆる「開業届」のことです。
事業を開始した日から1ヶ月以内に提出しなくてはならないとされていますが、実は出さなくてもなんら問題はありません。
ただし、事業をスタートしてから屋号付きの銀行口座を開設する場合など、開業届の提出を求められるシーンが少なからずあります。提出しておいて損はない書類です。
提出先は管轄の税務署です。税務署に行って「開業届を持ってきました」と言えば受け付けてくれます。郵送でも受け付けてくれます。
提出分とコピーの2つを準備します。コピーには受領印を押してもらい、自宅や事務所に保管しておきます。
開業届はPDFファイルでダウンロードしたものをプリントアウトして提出しても良いですし、雛形が税務署においてあります。
開業届の書き方の参考はこちらです。
もしわからない部分があったら、税務署に電話して聞くか、直接出向いてもていねいに答えてくれます。
所得税の青色申告承認申請書
個人事業主は「白色申告」と「青色申告」の2種類の確定申告方法を選択できます。
白色申告の方が簡単なのですが、控除が受けられません。
青色申告の場合は記帳が必要になるので少し面倒ですが、「青色申告特別控除」として10万円または65万円の控除が受けられるので、大幅な節税になります。
記帳方法として「簡易簿記」を選択した場合は控除額10万円、「複式簿記」を選んだ場合は控除額は65万円です。
私も最初から青色申告で開業しましたが、記帳はすぐにできるようになりました。最近は会計ソフトも進化しているので、会計や簿記の知識がなくても簡単に記帳は行なえます。
その他にも青色申告のメリットはたくさんあります
青色事業専従者給与
生計をともにしている配偶者などに対して給料を支払えます。この給料は経費にできるので節税になります。
貸倒引当金の設定
売掛金などに対して貸倒引当金を一定割合で設定できます。貸倒引当金は経費扱いなので節税になります。
損失の繰越
赤字の場合は、その損失を最大3年間繰り越せます。つまり、翌年黒字になった場合に前年の赤字と今年の利益を相殺できるので節税になります。
あわせて読みたい:
青色申告と白色申告の違いは?メリット・デメリットをわかりやすく解説
青色申告承認申請書も管轄の税務署に提出するので、開業届と合わせて出すことをおすすめします。
開業届と同じく、提出分とコピーの2つを準備します。コピーには受領印を押してもらって保管しておきます。
ただし、青色申告の承認が受けられるのはその年の3月15日までと決まっています。3月15日を過ぎてしまった場合は、青色申告の承認は翌年からとなります。
書き方の参考は以下の通りです。
その他の書類
個人事業主になるために提出することをおすすめする書類は上記の2点のみです。
青色申告承認申請書は節税のため、開業届はモチベーションを高めるためであったり、屋号付きの口座などを開設するためです。
「自分は白色申告でいいし、個人の口座で事業をするから別にどうでもいい」という方は、「今日から俺は個人事業主だ!」と名乗った瞬間に自営業になれるので、提出書類は不要です。
また、その他にも必要に応じて出しておくと良い書類があるので紹介します。ちなみに、私が当初提出したのは「開業届」と「青色申告承認申請書」の2点だけでした。
青色事業専従者給与に関する届出書
生計をともにしている配偶者に事業を手伝ってもらうことで、給料を支払えます。
支払った給料は経費にできるので節税になりますが、そのためには「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する必要があります。
また、青色事業専従者給与を支払うには「青色申告」を選択している必要があるので、「青色申告承認申請書」と合わせて提出しましょう。
提出場所は管轄の税務署で、その年の3月15日までに提出する必要があります。
青色事業専従者給与に関する届出書 PDFダウンロードはこちらから
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10件のコメント
はじめまして、質問があります。よろしくお願いします。
私は海外で雇われているのですが、先日、今の仕事とは関係ない事で、特許出願したのです。この時お世話になってた弁理士より、個人事業主になって下さいと言われました。
理由は、特許審査の費用が1/3に抑えられるという事ですが、私の場合は、海外在中で、国民健康保険にも加入していないというケースです。
ビジネス展開も考えていますが、日本に帰らなくても出来る事です。
コメントありがとうございます。
個別色の強い案件かと思いますので、ここで具体的なアドバイスをするのは難しいです。
ただ、出願費用がどの程度になるかわかりませんが、「費用が1/3に抑えられるメリット」と「個人事業主としてやっていくこと」を天秤にかけたときに、ご自身にとってどちらの方が良いと思えるか?で判断するのがよろしいのではないでしょうか。
はじめまして。よろしくお願いします。整体の技術を学んでいます。今年から少しずつですが、出張や家で知り合いを施術し始めました。一月にして10人もいません。保険や年金の支払い、雑費等で収入はマイナスですが、開業届を出さないといけないのでしょうか?
>No Nameさん
コメントありがとうございます。
記事の本文に記載のとおり、個人事業主として事業を営むにあたって、開業届の提出は必須ではありません。
また「保険や年金」が何を指しているかわからないのですが、もし国民年金や国民健康保険のことを指しているようでしたら、これらは経費に含めることができず、収入のマイナスとしてカウントすることはできないという点も押さえておいた方がよいかと思います。
以上、ご参考になれば幸いです。
はじめまして。初心者的な質問で恐縮ですがよろしくお願いします。
現在、会社員です。副業が認められています。
当面、3年間ほどは収益がまったく見込めないような事業になるものと思われますが、青色申告コースで選択した場合、まったく収益が見込めない3年間でも青色申告をしていく必要があるでしょうか?
>YKYOTOさん
必ずしもする必要はありませんが、青色申告しておくと、その3年間の損失が「繰越控除」できるため、黒字化した時に支払うべき税金を少なくできます。
詳しくは、下記の記事の「純損失の繰越控除」の項目をご参照ください。
個人事業主でもできる5つの節税対策、税金を減らし手元資金を増やす方法
こんにちは。お尋ねしたいのですが、個人事業主と名乗り申請を出さずお仕事をしていたのですが、領収書を発行してほしいとお客様から御願いされた場合、個人名で発行する領収書の効力はあるのでしょうか。ご存知でしたらご教授願います。
>まるさん
おそらく問題ないと思いますが、念の為税理士または税務署へ聞いてみることをおすすめします。
はじめまして、質問させていただければと思います。
自身の経験を元に、子育て中の女性のマインドをポジティブに向けられるようなママ向けイベントやセミナーを開催したい夢があります。
ただ開催するにあたり、カウンセラーや保育士等の資格を取り、信頼のおける形(身分)で集客したいと思うのですが、資格を取って準備し終わってから開業届を出すべきなのか、、
資格も無く、話す内容に根拠がなくとも始めて見るべきか、、そもそもお金を生み出す事が出来るのかも分からなく事業計画がしっかり出来ていない状況、、
川原さんのまずは届け出してみるという言葉に驚きましたが、背中を押してもらえたような気にもなり、、悩んでいます。
アドバイス頂けたら嬉しいです。
>あきさん
コメントありがとうございます。
事業を行うにあたって、資格や免許が必須のビジネスを行うのであれば、事前にそうした資格・免許の取得が必要です。
しかし今回の場合、資格必須というわけではなさそうですので、資格取得前に開業届を出す方が良いと思います。
なぜなら、自営業としてまず開業し、それから資格を取るようにすれば、資格の取得費用は経費として計上できますので。
また、資格のない状態でまずやってみて、意外と上手くいくようなら、そもそも資格はなくても事業が進められるわけですから、資格の取得代金すら払わなくても良く、一石二鳥ですよね。
金融機関から事業資金を借りる場合なら話は別ですが、開業するにあたって事業計画は必要ありません。(開業届に事業計画を書く項目はありません)
開業届けを出す前に、副業感覚でまずはやってみるというのも良いかと思います。副業としてやってみて、いけそうなら正式に開業するという形でも遅くはないと思います。