個人事業主の屋号の決め方にルールはあるの?事業名は慎重に
執筆者:川原裕也 更新:
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屋号名の決め方で失敗しないために。
個人事業主として開業すると「屋号名」を設定します。この屋号名ですが、コツをおさえておくとビジネスを成功に導く良い名前を付けることができます。
逆に、屋号名の付け方で失敗をすると売上に影響してしまう可能性もあります…
私自身、個人事業主と株式会社設立を両方経験してきました。
今回は、屋号名を付ける時に私が考えたこととを、失敗談なども含めて紹介します。
目次
事業内容がわかる屋号名がおすすめ
屋号名はいわば、社名のようなものなので、特にルールはありません。
自分が一番気に入ったもの、自分の事業に対するモチベーションが高くなる納得のいく屋号名を付けるのが一番よいと私は思います。
ただ、屋号名を考える上でおすすめなのは「事業内容がわかる名前をつけること」です。
- ヘアサロン◯◯
- ◯◯会計事務所
- ◯◯デザイン
など、屋号をみて事業内容が想定できると、相手に自分が何者かわかってもらいやすいです。
私は個人事業主のときも、株式会社でもまったく事業内容を示していない名前をつけていたので、名刺を交換する度に「どんな事業をやってるんですか?」と聞かれてしまいます。これは失敗でした。
信頼を得られるマジックワード
社名や屋号名には、信頼を得られるマジックワードというものがあります。
- 東京スピード印刷(都市・地域名)
- 山田太郎事務所(名前・事務所)
- 日本教育企画(日本)
などです。
「東京」などの地域名を入れると、どの地域で活動しているのかわかりやすいです。
「個人名」を入れると信頼性は上がりますし、「◯◯事務所」と名前を付けると玄人っぽく聞こえるので、その道のプロだと思ってもらいやすいです。
また、「日本」というのもマジックワードです。例えば「日本デザインプロダクション」のような名前を付けると、歴史ある事業所だと思ってもらいやすいです。
覚えてもらいやすいか
私が屋号名を考えるときに気にしていたポイントの1つが「覚えてもらいやすいか」です。
先ほどの「信頼を得られるマジックワード」は有効な方法である一方、ありきたりなので覚えてもらいにくいというデメリットがあります。
では、覚えてもらいやすい屋号名とはどのようなものなのか。
良い方法としては、友達に「独立するときの屋号名を◯◯にしようと思ってるんだよね。」と何気なく言ってみることです。
次回その友人に会った時に、屋号名を覚えていてくれたら良い屋号と言えるでしょう。
ビジネスをスタートすると、一期一会となることも多いです。一度会っただけで屋号を覚えもらえるかも、勝負のポイントです。
聞き取りやすいか
発音しやすい、聞き取りやすい、読みやすいというのも、屋号を考える時に気にしたほうがよい項目です。
私の会社は「株式会社クートン」というのですが、この商号は電話する時にすごく困ります。よく「クーポンさんですか?」と聞き返されてしまいます。
電話で空いてが聞き取りやすい屋号を付けるのもポイントです。
必ずしも濁点を入れた方が良いというわけではないのですが、私の場合は「クートン」だと聞き取りにくいので、「クーポン」や「グートン」など、濁点を入れることでこの問題を解決できたなぁと感じています。
読みやすさでいうと、難しい漢字や英語などがそれにあたります。
例えば、屋号名にフランス語とかを使ってしまうと、カッコイイのですがその分、一般の人には覚えてもらいにくく、また発言の際にストレスを与えてしまいかねません。
株式会社や銀行などの名前はつけられない
屋号はあくまでも個人事業主が付けるものです。
株式会社などと誤認されるようなものは設定できないルールとなっています。
例えば「株式会社◯◯」「◯◯ Inc.」「◯◯Co Ltd」などですね。
また、日本の法律で「◯◯銀行」という名前は銀行の営業権を取得していなければ付けることができないので、こちらもNGです。
屋号名を選んだ理由を明確に語れること
これ、すごく重要です。
事業を始めてみると、初対面の人に話のきっかけで「なんでこの事業名にしたのですか?」とか「この事業名はどういう意味ですか?」と聞かれることがすごく多いです。
この時に、その屋号名をつけた理由を明確に語れると、自分のことを覚えてもらいやすいメリットがあります。
人間は「ストーリー」があると記憶に定着しやすい特性をもっています。
なので、その屋号名をつけたきっかけとして、良いストーリー(またはエピソード)が語れることは重要なポイントの1つです。
屋号名が他の自営業と被っていないか
個人事業主は国内で200万人以上いると言われています。
一般的で思いつきやすそうな屋号名は、他の人と被る可能性が極めて高いです。
屋号名が被っても争いに発展する可能性は低いですが、できることならオリジナルなものをつけたいと思いますよね。
そこでおすすめの方法は「グーグルで屋号名を検索してみる」ことです。
グーグルで検索してみて、思いついた屋号名がヒットしなければ、それは自分だけのオリジナルである可能性が高いです。
SEO対策を意識した屋号名
事業を始めてからWeb集客を検討しているのであれば、SEO対策を意識して屋号名を設定することをおすすめします。
SEO対策とは、キーワード検索をした時に検索結果の上位にヒットさせるテクニックのことです。
グーグル検索では「検索キーワードにマッチするホームページを上位表示させる」という基本事項があります。
例えば、屋号名を「大阪デザイン企画」としておくと、「デザイン事務所 大阪」などと検索した時に検索結果で上位に表示されやすいです。
こうした理由からも、前述の
- 事業内容がわかること
- 地域がわかること
- 他の人と被っていない屋号名
が重要ポイントとなってきます。
例えば、豊田さんという人が「トヨタ事務所」のような屋号にしてしまうと、ホームページで「トヨタ」とか「トヨタ事務所」と検索しても、トヨタ自動車に関するサイトが山ほどヒットするため、SEOで不利になります。
少なくとも、屋号名で検索した時に1番目に表示されるようなオリジナルなものを設定することをおすすめします。
屋号名はつけなくても良い
じつは、屋号名は必ずつけなくても構いません。
屋号名「なし」でもまったく問題ありません。
個人事業主は「個人名」が何よりも重要なので、良いものが思いつかなかったら屋号名を考える必要もないですし、後から考えても問題ありません。
私の友人の個人事業主に聞いても、半分ぐらいは屋号を付けていませんでした。
屋号の変更手続きは不要
また、屋号の付け方を失敗してしまった…と思っても安心です。屋号名はかんたんに変更できます。
開業届に屋号名を記載する必要はありますが、屋号名の変更に関して届け出をする必要はありません。
なぜなら、個人事業主の場合は屋号よりも個人名が重視されるからです。
今日、屋号名を変えようと思い立ったら、変更手続き不要ですぐに変えられます。
次回の確定申告をする時に、新しい屋号名を記載すればOKです。
個人名を押し出していくメリット
最近はソーシャルメディアの普及により「個人がより影響力を持つ時代」になっています。
会社や屋号といったブランドよりも、個人名がブランド化している時代であると感じている人も多いと思います。
こうした時代の流れを考えると、屋号名をつけずに個人名を押し出していく方法も、ビジネスとしては有利に進むかもしれません。
個人名を積極的にアピールすることで、責任は大きくなりますが、その分得られる信頼も大きいです。
屋号付きの銀行口座を作るには
基本的に、どの銀行でも屋号名のついた銀行口座が作れます。
ただし最近は、屋号名だけの銀行口座は作れないので、どの銀行でも「屋号名+個人名」の口座になります。
ちなみに、個人事業主は事業と個人の財布が一緒なので、昔から使っている個人名義の口座を勝手に事業用の口座にすることもできます。
あえて屋号付きの事業用口座を持たなくても、これまで使っていた銀行口座がそのまま使えます。これが一番手軽です。
また、屋号名の銀行口座開設は手続きや必要書類が増えてややこしいので、大手銀行よりもネット銀行での口座開設がおすすめです。
PayPay銀行は「ビジネスアカウント」として営業性個人の口座がすぐに作れます。ビジネス用途のサービスも充実しているのでおすすめです。
必要書類は、PayPay銀行の記事を参照してください。
また、楽天銀行も「個人ビジネス口座」を設けています。必要書類などはこちらのページで解説しています。
住信SBIネット銀行は、個人事業主用のビジネス口座を提供しておらず、個人用・法人用の2種類のみとなります。
住信SBIネット銀行を事業に使いたい場合は、一般の個人向け銀行口座を開設し、そのまま自分で事業用として使えば問題ありません。ただし、屋号名を付記することはできません。
個人事業主として開業するには、事前の準備も大切です。
開業前・開業後に準備しておくと良いものはこちらのページで解説しています。
次の記事:起業したいけどアイデアがなくて何をしてよいかわからない時に読んで欲しい
2件のコメント
こちらのページ大変参考になりました。
少し気になったことがありご質問いたします。
“株式会社などと誤認されるようなものは設定できないルールとなっています。”とありますが、例えば「○○社」というような屋号は、上記のルールに触れるのでしょうか?それとも問題ないのでしょうか?
お教えいただけますと幸いです。
>縞々さん
あくまでも私の見解に過ぎませんが、最後に「社」がつく屋号はだめだというルールはないので使えるのではないでしょうか?
一例ですが「屋号名:森の社(もりのやしろ)」とか。
調べたわけではないので、事前に提出先(税務署)に電話して確認することをおすすめします。