自営業・個人事業主がマイナンバーカードを作るとメリットが多い、その理由は?
執筆者:川原裕也 更新:
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マイナンバー制度がはじまってから数年が経ちました。
まだまだ普及途上にあるマイナンバーカード(個人番号カード)ですが、徐々に保有メリットが拡大しています。
- 作るのが面倒
- 個人情報が政府に渡るのでは?
など、さまざまな理由でマイナンバーカードを作ることを拒む人も多いようです。
しかし「マイナンバー制度・マイナンバーカードの普及は政府の方針」でもありますから、1日も早くカードを発券し、利用メリットを享受する方が賢いと私は思います。
自分がどれだけ拒んでも、「国策」という大きな流れを変えることは難しいでしょうから、素直に「時流に乗る」ことを選択した方が良いというのが私の考えです。
いわゆる「国策には逆らうな。」というやつですね。
事実、自営業や個人事業主など、事業を営む人にとって、マイナンバーカードを持つメリットは特に大きいです。
この記事では、自営業・個人事業主・フリーランスという視点から、マイナンバーカードの利用メリットと、作成方法をわかりやすく解説します。
目次
自営業がマイナンバーカードを作るメリット
すでに、マイナンバーカードを使って様々な手続きができるようになっています。
なにかと行政の手続きが多い自営業や個人事業主にとっては、マイナンバーカードを持つことで、面倒な手続きから解放されます。
e-Taxで確定申告ができる
マイナンバーカードを持っていると、確定申告書類の提出がネット完結で行える「e-Tax(イータックス)」が使えます。
毎年2月16日から3月15日までに行う確定申告。
確定申告書類の提出は以下の3つの方法のいずれかで行います。
- 作成した書類を税務署に持っていく
- 作成した書類を税務署に郵送する
- e-Taxで自宅からネット申告
このうち、最も手軽なのはe-Taxによる電子申告です。
確定申告のe-Taxは、さらに下記の2つの方法に分かれます。
- マイナンバーカード方式
- マイナンバーカードとカードリーダー(またはスマホ)を使ってe-Taxにアクセスする。
- ID・パスワード方式
- ID・パスワードを税務署で発行してもらい、それを使ってe-Taxにアクセスする。マイナンバーカードは不要。
「マイナンバーカード方式」では別途、カードを読み取る機器(カードリーダー)の購入が必要です。(スマホをカードリーダーの代わりに使うこともできます)
上記を見て「ID・パスワード方式が使えるなら、わざわざマイナンバーカード方式を選ぶ必要はないのでは?」と思った方も多いでしょう。
しかし税務署から郵送される書類にはしっかりと「ID・パスワード方式はマイナンバーカードが普及するまでの暫定措置である」ことが記載されていました。
つまり、現時点ではID・パスワード方式も使えるが、いずれマイナンバーカード方式のみに切り替わる方針であると、国税庁は述べているわけです。
将来的にID・パスワード方式が使えなくなるのであれば、今のうちから「マイナンバーカード方式」でのe-Taxのやり方を覚えておいたほうが良いと思います。
ちなみに、作成した確定申告書類を直接税務署に持っていく、または郵送で提出する場合でも、マイナンバーカードや本人確認書類の写しを添付する必要があります。
コンビニで行政手続きができる
マイナンバーカードを持つメリットの2つめ。このメリットは個人事業主にとって非常に大きいです。
以前、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)・印鑑証明書・納税証明書をネットで取る方法という記事でも書いたのですが、個人事業主の場合「マイナンバーカード」があればすべてコンビニで証明書の取得ができます。
自営業として活動していると、なにかと公的な書類の提出を求められることが多いです。(特に金融機関に申し込みをしたり、取引をしたりする場合など)
マイナンバーカードを持っていれば、わざわざ市役所に出向いて「住民票」や「印鑑証明書」を取得したり、税務署に出向いて「納税証明書」を取得する必要がなくなります。
お近くのコンビニで、
- 印鑑登録証明書
- 各種税証明書
- 住民票の写し
- 住民票記載事項証明書
- 戸籍証明書(全部事項証明書、個人事項証明書)
- 戸籍の附票の写し
といった行政書類がすべて取得可能です。(参照:コンビニ交付とは)
また、マイナンバーカードは公的な証明書としても使えます。
銀行や証券会社などの金融機関に口座を開くときは、たいてい「運転免許証」や「健康保険証」または「パスポート」といった本人確認書類の提出が必要です。
マイナンバーカードは、こうした本人確認書類としても利用可能です。
最近は、銀行や証券会社に新規口座開設を行う際、マイナンバーの提出が必須となりつつあります。
マイナンバーカードを持っていない方でも、マイナンバー通知カードに記載されている個人番号(マイナンバー)を提出しなくてはなりません。
マイナンバーカードがないと、個人番号の写しと、本人確認書類の両方を提出しなくてはなりません。
一方で、マイナンバーカードを本人確認書類として使っている方は、個人番号カードの提出と、本人確認書類の提出をマイナンバーカードを1枚で済ませることができます。
私自身、銀行や証券会社に新しく口座を作ることもありますが、最近は「マイナンバーの提出を求められることが非常に多くなってきたな。」と実感しています。
2021年3月からは、マイナンバーカードが健康保険証としても使えるようになります。
これも新たなメリットの1つです。
マイナポイントによる25%のポイント還元
消費税増税の対策も兼ねて、政府は新たに「マイナポイント事業」を始めます。
マイナポイント事業とは、2020年9月~2021年3月末までに行われる、私たち消費者への還元事業です。(実施期間は7ヶ月間です)
「地域振興券」や「プレミアム付商品券」のような、いわゆる景気対策のための「政府のバラマキ」です。
マイナポイント事業は景気対策と、マイナンバーカードの普及を兼ねており、その還元率は25%と非常にお得なものとなっています。
利用上限は2万円なので、最大で5,000円相当のポイントが還元されます。
マイナポイント事業で最大5,000円分のポイントを手に入れるためには、
- マイナンバーカードを取得
- マイキーIDを設定
- キャッシュレス決済サービスを選択
という3つの手順が必要です。
マイナンバーカードの取得方法については後ほど詳しく解説します。
「マイナンバーカード」と「自分が利用したいキャッシュレス決済」の連携に必要な「マイキーID」は、スマホまたはパソコンを使って発行します。(パソコンで発行する場合は別途、カードリーダーが必要)
マイキーIDの発行方法はとても簡単です。
「マイナポイント」というスマホアプリを無料ダウンロードして、そのアプリを立ち上げ、スマホでマイナンバーカードを読み取るだけです。
この際、マイナンバーカード発行時に設定した4ケタの暗証番号の入力が必要です。(これ、忘れる人がすごく多いので注意です)
スマホアプリでマイナンバーカードを読み取ると、自動的に「マイキーID」の発行が完了します。
あとは、自分が利用したいキャッシュレス決済サービスにマイキーIDを登録するだけです。
マイナポイント事業の対象となるキャッシュレス決済サービスは、記事執筆時点では未定です。
しかし、PayPayや楽天Pay、Suicaなどの主要なキャッシュレス決済については、すべて対象となる見込みです。
こうしたキャッシュレス決済にチャージをすることで、チャージ金額の25%のポイントが付与される仕組みです。(最大2万円のチャージで、5,000円分のポイント付与)
押さえておきたい点としては「マイナポイント」というポイントや、マイナンバーカードを使って支払いをするわけではないということです。
実際の支払いは、マイナポイント事業に参加している、自分が選んだキャッシュレス決済サービスで行います。また、ポイント還元もそのキャッシュレス決済サービスで付与されるポイントとして還元されます。
マイナポイント事業の申し込みは2020年7月から、制度の実施は2020年9月からです。
この期間になるとマイナンバーカード発行の申込みが混み合うことが予想されます。
マイナンバーカードの取得、マイナポイント事業の利用を検討している自営業の方は、余裕をもって早めに申込みをしておくことをおすすめします。
マイナポイント事業は2021年3月末までの期間限定で行われます。
しかし政府が「キャッシュレス決済の普及」、「マイナンバーカードの普及」を推進していることからも、今後新たな還元事業が実施される際には、マイナポイント事業での付与方法が基本となるように思われます。
言い換えると「キャッシュレスでの支払い」、「マイナンバーカードの保有」を拒んでいる人は、どんどん不利になっていく可能性が高いということです。
法人設立の手続きを一元化
法人設立の際に必要な行政手続きを、マイナンバーカードを使うことで、一括して電子申請できる取り組みも進められています。
将来的に法人設立を検討している人にとっては大きなメリットです。
下記は日本経済新聞からの引用です。
政府は法人設立に関する様々な手続きをインターネットで一度で済ませられるようにする。まず20日から国税や地方税、年金など所管の官庁別に5カ所に分かれていた手続きをまとめるサービスを始める。ビジネス向けの環境を整え、起業や投資を促す成長戦略の第1弾の取り組みとなる。
申請者は政府が開設した専用サイト「マイナポータル」でマイナンバーカードを使って手続きをする。従来は税務署、労働基準監督署、年金事務所などに窓口が分かれているため、個別に手間がかかっていた。
さらに2021年2月をメドに法務省が所管する定款認証や法人設立登記も追加し、手続きの一元化を完了する。あわせて印鑑の届け出を不要とする法整備もすすめ、会社を立ち上げる事務手続きをすべてネット上でこなせるようにする。
これまで紙の書面で手続きしなければならなかったことが、マイナンバーカードの普及とあわせて電子申請できるようになりつつあります。
電子申請の恩恵を大きく受けるのは、自ら事業を営んでいる個人事業主やフリーランスであることは言うまでもありません。
マイナンバーカードを作らないデメリット
逆にマイナンバーカードを作らないとどのようなデメリットが生じるのか。
そもそも、上記で述べたメリットが享受できないことがデメリットと言えますが、私はこれに加えて「隠れたもう一つのデメリット」があると考えています。
政府は「2022年度末までに、ほぼすべての住民にマイナンバーカードを普及させる」という目標を掲げています。
実際、どの程度までマイナンバーカードが普及するかはわかりませんが、この目標を達成するために、マイナポイント事業をスタートさせたりしているわけです。
私が考える、マイナンバーカードを作らないデメリットとは「将来的にマイナンバーカードが普及すると、マイナンバーカードを持っていない人に疑いの目が向けられる」というもの。
もし私が政府の立場なら、マイナンバーカードを普及させた後「それでもマイナンバーカードの保有を拒んでいる人に対して、脱税などの疑いの目を向ける」ことは間違いありません。
- 個人情報が政府に渡る
- 銀行口座のお金の流れを知られてしまう
悪いことをしていなくても、なんとなく「検閲」に近いことをされるのは嫌だと感じる人は多いと思います。
しかし冒頭で述べた通り、これは「国策」であり逃れることのできない流れでもありますので、素直に従うしかありません。
マイナンバーカードが普及してしまえば、逆に「マイナンバーカードを持たない少数派に疑いの目が向けられる」のですから。
※あくまでも私個人の意見です
マイナンバーカードの作り方
マイナンバーカードを作るためには、
- 個人番号通知カード
- 個人番号カード交付申請書
が必要です。
「個人番号通知カード」は、マイナンバーカードの「仮カード」のようなもので、自分の個人番号(マイナンバー)が記載されています。
「個人番号通知カード」と「個人番号カード交付申請書」はセットになっていて、自宅に郵送で届いているはずです。
もし、手元にないという場合。もしくは紛失してしまった場合は再発行が可能です。(ただし再発行には原則、交付手数料がかかります)
「個人番号通知カード」と「個人番号カード交付申請書」を再発行する場合は、お住まいの市役所や区役所などで再交付申請を行います。
スマホでも交付申請ができる
マイナンバーカードの発行依頼は、
- スマホによる申請
- パソコンによる申請
- 郵送による申請
- 証明写真機からの申請
といった方法で可能です。
おすすめは、最も手軽な「スマホを使って発行申請をする方法」です。
スマートフォンのカメラで、個人番号カード交付申請書に記載のQRコードを読み取り、必要事項を記入するだけで申し込みは完了します。
マイナンバーカードは「写真付き」ですので、申請時に「顔写真の画像」もアップします。
証明写真機などで撮影しても良いですが、事前にスマホのカメラで自分の顔写真を撮影しておくのがおすすめです。
マイナンバーカードを受け取る
マイナンバーカードの発行申請をしてから、カードが出来上がるまでに約1ヶ月かかります。
前述の「マイナポイント事業」のスタート前後には申請が混み合うことが予想されますので、早めの申請をおすすめします。
交付申請後、マイナンバーカードが出来上がったら、お住いの市区町村から「マイナンバーカードが出来上がったので、取りに来てください」という「交付通知書」が郵送で届きます。
交付通知書が手元に届いたら、
- 届いた交付通知書
- 個人番号通知カード
- 本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
- 住民基本台帳カード(お持ちの方のみ)
を持って、お住いの市役所または区役所などに行きます。
※持ち物や受取場所の詳細すべて「交付通知書」に記載されていますので安心してください
忘れてはいけない暗証番号
マイナンバーカードを受け取る際、受取場所(市役所や区役所など)で、4ケタの暗証番号を設定します。
設定した暗証番号を忘れてしまう人はとても多いので注意です。(実際、私も忘れていたことがあり、住所変更時に困ったことがあります)
4ケタの暗証番号はマイナポイント事業に使う「マイキーID」を発行する際にも必要ですので、必ず覚えておきましょう。
以上でマイナンバーカードの発行手続きは完了です。
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