自営業になって7年、私が経験した6つの失敗談
執筆者:川原裕也 更新:
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私は2010年に個人事業主として自営業になり、その後2012年に株式会社を設立しました。
先日無事に5期目が終了し、いつの間にか自営業になって7年が過ぎていました。
私は元々、経営者になりたいと思ったことや起業したいと思ったことが一度もありませんでした。
ですので、自営業として経営をしていく上で必要な勉強は何一つ行っておらず、その都度さまざまな失敗を経験することで、やってはいけないことを学んできました。
今回は、これから事業を始めようとする方へ、私が自営業を始めてからの7年間で学んだ失敗談を6つほど紹介します。
目次
私が犯した経営の6つの失敗
自営業が犯してしまいがちな失敗、いずれも当たり前のことばかりですが、わかってはいても実践では意外とやってしまうものです。
1.ターゲット顧客を明確にする
事業の大きな失敗を招きかねないミスとして「ターゲット顧客が明確に定義できていない」ことがあげられます。
いわゆる「マーケティング」の分野になるので、少しでも経営の勉強をしている人からすると、当たり前と思うかもしれません。
しかし私は、ターゲット顧客を明確にしないままにプロジェクトをスタートさせ、お金と時間を浪費してしまった経験があります。
「すべての人がターゲット」とか「私の事業はターゲット顧客を設定するのは難しい」と言ってしまうようなプロジェクトは大抵うまくいきません。
ターゲット顧客とはどういうものか。
「東京に住む18歳~22歳までの女性で、4年制大学に通っていてファッションの系統がこんな感じで~」と言った具合に、具体的に絞り込みます。(こういうのをペルソナといいます)
ターゲットとする顧客が明確になると、どのような宣伝方法で、どういう製品をつくり、どこにお金を投じればよいかが自ずと定まります。
これは、その事業が成功する確率が上がるという意味もあるのですが、何よりも事業に必要なコストが最小限で済むというメリットがあります。
ターゲット顧客が絞り込めていない場合、全ての人に対して当てずっぽうにマス広告(テレビCMなど)を打つようなものなので、お金がいくらあっても足りません。
自社の事業のターゲットを絞り込めば絞り込むほど、成功率は上がり、お金もかけずに済みます。
ターゲット顧客の明確化はマーケティングの教科書に載っていることですが、それを行うことが結果的にコストダウン(利益率UP)に繋がることは、あまり知られていません。
つまり、競合他社よりもターゲット顧客をより明確にすれば、より高い利益率でビジネスを展開でき、いわば競合よりも優位に立てるのです。
そして、ターゲット顧客を決めるということは、顧客以外の人を切り捨てる勇気を持つことでもあります。
私が以前通っていた美容室は、「男性専用」を売りにしていました。
美容室をやる上で女性客を切り捨てることは、とても勇気のいることです。
しかし、「男性専用美容室」で勝負をすることで、
- 競合他社との差別化ができる
- 専門性が出せる
- ターゲット顧客に絞って広告が打てる
- ターゲット顧客の満足度を最大化できる
という成功要因を確保できるのです。
2.お金をかけすぎない
これは多くの経営者が一度は失敗する内容だと思います。
しかし、これから事業を始めるにあたって、金融機関から資金調達をして、この失敗を犯してしまうと大変です。
事業をやる上では、どんなことにでもお金をかけすぎないことが最高の成功法則です。
例えば、美容室を開業する場合を考えてみます。
おそらく、経営者の約半分ぐらいの人が
- 一等地に出店してブランド力を高める
- 使う薬剤にもお金をかけて差別化する
といった考えを持ちます。
しかし、この手の「金をかけて勝負する」という発想はうまくいかないことが多いです。
そしてお金をたくさんかけているだけに失敗した時のダメージも大きくなります。
お金をかければなんとかなるという考え方は捨てるべきで、お金は足りない状態でギリギリに切り詰めて勝負した方がうまくいきます。
もし私が今美容室を経営するとしたら、
- 場所が悪いと言われるようなところ(でも家賃は安い)
- 競合他社よりも安い薬剤を使う
という選択をとります。
このような悪条件の中で、事業をうまく軌道に乗せるために最大の努力をします。
そしてお金とノウハウが貯まったら、よりよい場所への2号店出店を試してみたり、薬剤の質を良くして顧客満足度をさらに高めます。
お金で買えるもの、つまり「マネーパワー」は最後の切り札として取っておくべきです。
私もお金をかけすぎて失敗したことが何度もあります。どんな事業もプロジェクトも、小さく始めることが大切です。
3.納税のためにキャッシュを残しておく
事業をすると様々な名目の税金を支払うことになります。
赤字のうちは消費税ぐらいしか払うものがありませんが、黒字になると「どのような税金をいつ払わなければならないか」を頭に入れ、資金繰りを意識する必要があります。
なぜなら、税金の支払いは数ある費用の中でも資金繰りに大きなインパクトを与えるものだからです。
例えば、利益が100出たとすると法人の場合でだいたい40ぐらいが税金で取られます。
ですので、100の利益を使って新規事業に投資したり仕入れを増やしたりして50を使ってしまうと、税金の40を支払った時に手元に残るお金が10しかありません。
これだけだと良いのですが、税金には「予定納税」という仕組みがあり、「去年これくらい儲かったから、今年も同じぐらい儲かりますよね?だっらその半分を先に納税してください」と言われます。
税金を40支払うと、来年も100の利益が出るという前提で、税金40のうちの20ぐらいを先に支払わなくてはなりません。
つまり、利益が100出ると税金は60ぐらい取られてしまい、手元には半分も残らない状態になります。
特に小売業などは、売上が拡大しているうちは仕入れも増えるため、資金繰りが厳しい状態が続きます。
キャッシュフローの管理が苦手な人は、税理士などの専門家と契約し、アドバイスをもらえる環境を作ることをおすすめします。
4.近づいてくる人に近づかない
海外旅行のガイドブックなどを見ると、「現地で声をかけられても無視して」などと書いていますよね。
これは経営でも同じです。
自分が相手に近づく人になるのは良いのですが、相手から自分に近づいてきた場合、その人は避けた方が無難です。
つまり「近づいてくる人に近づかない」ことです。
自営業をしていると、様々な人が様々な話をもちかけてきます。
彼らは、電話、メール、交流会など色々な方法で近づこうとしてきます。
自営業は孤独ですから、つい話に乗ってしまう人も少なくありません。
しかし私の経験上、電話営業、メール営業、交流会営業をしてくる人のサービスには、ろくなものはないです。
また、電話営業などは時間も取られてしまいますから、すぐに電話を切るコツなどを覚え、極力時間を割かないようにすることをおすすめします。
相手からアプローチされるのではなく、自分が良いと思った人にアプローチをし、お付き合いをする方が良い人と出会えます。
5.事業計画は具体的に綿密に練る
自分の事業や企画、プロジェクトの計画は、とにかく具体的に、そして綿密に練り上げます。
プロジェクトをうまく成功させるには、どれだけ具体的に計画できるかにかかっていると思います。
企画が甘いと、実際にそのプロジェクトがスタートして、あとから「これはどうしよう?」と考えなければなりません。
複数のメンバーでプロジェクトを運営していると、その都度他のメンバーも困りますので、結果的にそのプロジェクトがよくわからないものになってしまいます。
私が好きな会社にファナックという日本を代表する企業があります。ファナックの創業者である稲葉清右衛門氏はこのように語っています。
「ありきたりの設計を製造段階で改善しようとしてもどだい無理」
「利益は開発時点で決まり、製造段階では生まれない」
走り出してから考えるという思想も重要ですが、やはりプロジェクトの成功は企画段階で決まっている、これも私が7年間でたどり着いた答えです。
6.協力者との認識の共有に時間を割く
私は元々、なんでも一人でやりたい性格だったのですが、事業規模が大きくなるに伴って、他の人と協業する機会が増えてきました。
専門性の高い分野の仕事は、やはりその道の専門家にお願いした方が効率的です。
協業の必要性が出てきたことで、これまでほとんど一人でやってきた仕事を「プロジェクトマネージャー」という立場で企画・管理をすることも増えてきました。
そのような中で出てきた失敗が、自分が思い描いていたものと完成して納品された物がまったく異なるという問題です。
例えば、自社のホームページ制作を専門家に行ってもらう場合、自分が思っていたものと違うものが仕上がってきて、最後になって修正が多く発生し、揉めることがあります。
こうしたことは、ホームページ制作者側にも、そして発注しているクライアント側にも問題があるケースが少なくありません。
プロジェクトで問題が生じ、結局「人にやってもらうよりも自分でやったほうが早い」ということになってしまうわけです。しかしそれではいつまで経っても、できる仕事の範囲が限定されてしまいます。
私は、協業がうまくいかない理由は「協力者と自分との認識にズレがあるから」だと思っています。
そして、双方の認識のズレをいかにして解消するかが、プロジェクトを成功させる秘訣だと思っています。
そのためには、定期的に認識をすり合わせをする場を最初の計画段階で設定しておくことが重要です。
例えば前述のホームページ制作であれば、「最初の打ち合わせで具体的な部分まで詰める → デザインのラフが終わった段階で意見交換 → デザインが完成した時点で打ち合わせ → システムに組み入れる途中の段階で打ち合わせ」と言った具合です。
問題が生じてから打ち合わせをするのではなく、最初から定期的な「打ち合わせポイント」をスケジュールに組み込んでおきます。
打ち合わせポイントをそんなに設定するのは無駄なのではないか?と思うかも知れません。
しかし、よく知っている間柄でない場合は、打ち合わせの時間(認識のすり合わせをするポイント)は、多すぎるぐらいにたくさん作っておいたほうがトラブルが起こりにくく、結果的にスムーズに仕事が進みます。
もちろん、打ち合わせの時間を取ることは相手の時間を奪ってしまうことにもなるため、相手の時間に配慮するようにします。
1回のミーティング時間を短くしたり、可能であればスカイプやZOOMなどのビデオ会議を活用するといった工夫を行います。
また、「あれ?」と思った時はその場ですぐに質問し、双方の答えを明確にしておくことも重要です。
例えば、イラストを描いてもらう時に、イラストの一部分に色の塗り忘れと思われるような部分が見つかった。
自分では勝手に「これは下書き状態だから最終工程で色を塗ってくれるのだろう」と思っていたが、結局それは最終段階になっても修正されず納品と言われた。
最後になって「この部分の色を塗り忘れている」と指摘した。
しかし、そのイラストレーターは明日から出張で作業ができない。
完成したイラストの印刷スケジュールは明日に迫っている。手遅れである。
その場で指摘してくれればすぐに修正できたのに、最後になって言うから修正作業が大変になる。
複数の人が絡むプロジェクトではこうしたシーンがとてもよく起こります。
自分の中で「きっとこうだ」と思い込んでしまうことが双方の認識のズレの始まりなので、疑問に思ったことはその場ですぐに確認しておくことが重要です。
認識のすり合わせが上手くいけば、相手に仕事を任せても上手くいくようになります。
これも当たり前のことのようですが、これまで経験したことがなかった自分にとっては大きな学びとなりました。
働くのが楽しくなった
この7年間で失敗したことはたくさんありましたが、大きく変わったこともありました。
一番変わったのは、私自身が「働くことが楽しいと思えるようになったこと」です。
自営業になる前は、働くことがとにかく嫌いでしたし、リタイアできるものなら今すぐにでもリタイアしたいと思っていました。
しかし、今では60歳になっても70歳になっても、ずっと働きたいと思っています。
そして、起業前は経営のことなど何一つ学んでこなかった私が、経営に関するサイトまで立ち上げているという始末です笑
これからも日本一やさしいビジネス情報サイトを目指して参りますので、「今日の経営」をどうぞよろしくお願いします。
次の記事は「経営者は孤独、事業の悩みを解決するために私がやっている3つのこと」です。
経営や事業で悩んだ時、私がどのように問題解決しているのかについて書いた記事です。
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2件のコメント
今、僕は大学一年で、経営学部に通っています。将来起業したいと思い色々なサイトを見ていたところ、このページに辿り着きました!川原さんの目指している通り「日本一優しいビジネス情報サイト」だなと印象を受けました。難しい表現を使わずとても分かりやすい文書、内容で勉強になりました。ありがとうございました
企業に向けて、高額なセミナーを受けようかどうしようかと、
悩んでおりました。
親切な説明で、大変よくわかりました。
結局は近道などなく、自分の強みを生かして、試行錯誤していくより
無いというのがよく理解できました。
ありがとうございました。