部下を持ったら必ず読む「任せ方」の教科書「プレーイング・マネージャー」になってはいけない
執筆者:川原裕也 更新:
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個人事業主であれ中小企業オーナーであれ、経営者になると「部下」に指示を出す機会が訪れます。
雇用している直接的な従業員でなくても、パートナーや取引先、アウトソーシングしている外注先など、誰かに対して指示を出し何かをやってもらう。つまり、他の人と協業していかなければビジネスは成立しません。
ここで求められるのがマネジメント能力の存在です。
外注先への依頼や従業員の指示が上手になることで、第三者のやる気を引き出すことができたり、より自分がイメージしていた完成物を作ってもらえるようになります。
しかし、マネジメントは本当に難しいです。逆に言うと、マネジメントこそが管理職だからこそできる高度な仕事と言えるので、椅子に座っているだけで高給取りである理由にもなります。
経営者だけでなく、会社で「上司」という立場に立つ人は、部下に命令を出す時に「マネジメントの意識」が求められます。
究極のマネジメント方法は任せること
マネジメントの仕方は人それぞれです。
例えば、アップル創業者のスティーブ・ジョブズは、開発中の製品に徹底的なこだわりを持っていたために、積極的に口を出し、部下に嫌われていました。
しかし、それほどまで製品にこだわりぬいた結果、iPhoneのような完成度の高い製品を生み出しました。
マネジメントの方法は人それぞれ、またシーンに応じて使い分けることも重要ですが、その一つの方法として「部下に任せてしまう」方法があります。
現状、あれやこれやと口うるさくいって上手くいっていないのであれば、やり方を「部下に任せるマネジメント法」に変えてみて、試してみてはいかがでしょうか?
社長が口を出すのは逆効果
指示を出す側からすると、つい細かいことまで口に出してしまいがちです。しかし、自分が指示される側の気持ちになって考えてみると、いちいち口を出されると、ムッときてしまいますよね。
そして一度でも「やる気がなくなった」とか「社長は嫌いだ」と思われてしまうと、途端にその仕事はどうでもよいものになったり、社長のご機嫌を取るための「無難な仕上がり」になったりします。
さらに、「社長に相談してもすぐ怒られる」と思われてしまうと、部下が意見を口にしなくなったり、ミスを隠したりしてしまいます。
このようになってしまうと最悪なので、常に部下が自分の意思を持って行動できる状態を維持する必要があります。とにかく、業務のプロセスに至るまで、いちいち細かく突っ込むことは逆効果です。
部下に一定の権限を持たせてみる
任せるマネジメントの第一歩は、部下に一定の権限を持たせることから始まります。
つまり、「社長が口を出す部分」と「社長が口を出してはいけない部分」を明確に分けてしまうのです。
このうち「社長が口を出してはいけない部分」については、たとえ部下がどれだけ非効率でダメな方法をとっていたとしても、決して口を挟んではいけません。
その中でも、最もやりやすいのが「予算管理」です。例えば、100万円までの決済権限を社員に与えたら、その100万円をどう使おうと口は一切出さない。一定の予算を社員に任せることは、明確な線引ができる良い部分の一つです。
丸投げをしてはいけない
「部下に一定の権限を持たせて任せてみよう」となった場合に、真っ先に思いつくのが「自由にやっていいよ」という丸投げの状態です。しかし、「部下に任せる」ことと「丸投げ」とは似て非なるもので、任せ方こそがマネジメントの重要なポイントとなります。
必要最小限のルールを設定し、後は自由にやらせてみる。その「最小限のルール」の設定の仕方こそが、管理職が担う部分です。
任せ方は具体的に大きく3つに分かれます。
- 権限の範囲内で自由にやらせる
- 仕事のいち部分を任せる(パーツごとに切り分け)
- 上司の仕事を代行させる
例えば、秘書を雇う場合「社長のスケジュール管理」という仕事の一部をパーツとして切り出して任せることになります。また、プレゼンや企画は社長が自ら行い、その資料作り、データ集めは部下にやってもらうなど、仕事のいち部分だけを任せるのは有効な方法です。
そしてもう一つは、上司の仕事を代行させることです。プレゼンから企画から資料作り、データ集めなど、一連の仕事をすべて社員にやってもらうという任せ方です。
指示を出す時のキーワードは「具体的かつ的確な指示を出す」です。そのための方法として4つの条件があります。
この部分こそが、任せ方の最も重要な部分だと思っています。
期限を示す
締切を設定します。そして真ん中のタイミングで一度だけ催促を入れるようにします。
ソフトバンクの孫社長もよく言っていることですが、期限を設定した上でそれを前倒しで達成する習慣を社員に身に付けさせることも大切です。これを意識しなければ、パーキンソンの法則によって部下は期限ギリギリまで時間を使って作業をし、生産性が上がりません。
優先順位を示す
何を優先しているのかを伝えます。納品物の質なのか、スピードなのか。
目的、背景を示す
何の目的でその仕事をやらせるのか。例えば、プロジェクト全体の一部をパーツとして切り出して仕事を任せる場合、プロジェクトの全体像を伝えます。
レベルを示す
クライアントに提供するような完璧なものを仕上げる必要があるのか、それとも社内で共有するだけのラフなもので良いのか。完成度のレベルを示します。
部下が60点を取ったら満足すること
そして、部下の仕事が60点だったら合格点を与えるだけの度量を持つことで、上手な任せ方は完成します。
部下に100点の仕事を求めても、指示を出す社長本人と同じ質で仕事ができるわけがありません。部下が60点の仕事をしたら「十分よくやった」と褒めるべきです。
上司がやるべきことは、指示の出し方や指示を出す人を変えることで、いかにして60点を100点に近づけるかであり、部下に60点以上の責任を押し付けるのは良くないということです。
部下によって長所と短所は違います。100点の仕事をしてもらうために、短所を克服させようとするのではなく、そういう場合は仕事を依頼する人を変えるのが正しい選択です。
部下の長所を知り、得意な仕事を徹底してやらせる、逆に短所は克服させず別の人間にやらせる。これが適切な采配の方法といえます。
また、部下が60点未満の仕事しかできなかった場合は、やり直しをさせます。何度でもやり直しをさせて、その答えは伝えずに部下に考えさせる。そして60点の仕事ができた時は精一杯褒めてやる。これが、任せ方のコツです。
ライフネット生命の出口会長(現在は退任されました)は、同社の知名度を上げるための講演活動を積極的に行っていました。
なぜなら、自分の知名度を使って会社のブランディングをすることは、会長・社長にしかできないことだからです。
どれだけ偉くても、仕事ができる人でも1日が24時間しかないという部分は同じです。
社長がプレイングマネージャーの状態ではいつか限界がやってきます。
このような時にしっかりとしたマネジメントができていると、社長がいなくても自動的に会社が回る仕組みを構築でき、社長は経営者にしかできない仕事に特化して会社を成長させていくことができます。
今回読んだ本。
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