仕事は8割捨てていい インバスケット式「選択と集中」の技術
執筆者:川原裕也 更新:
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ゼネラル・エレクトリック社(GE社)の元社長である「ジャック・ウェルチ」はこのように言いました。
生産性とはぼろきれを絞ることではない。生産性とは、どんなことも改善の余地が無限にあるという信念そのものだ
知恵に限界はない。だから、無理に思えても、知恵を出すことで改善はいくらでもできるというのが真意だった。大切なのは、「限界はない」と信じることなのだ
企業は新しい設備を導入したり業務フローを見直すことで、業務効率を改善できます。そして、その改善には限界はありません。
仕事を効率化し、生産性を上げることで、少人数の小さな会社でも大きな利益を出せたり、企業の利益率はどこまでも改善することができます。
ジャック・ウェルチがGE社で行った功績として有名なのは「選択と集中」です。
ジャック・ウェルチは「業界でナンバーワンかナンバーツーになれない事業は売却もしくは撤退すること」を基本方針とし、無駄な仕事を選別し、浮いた力を必要なことに集中することでGE社を革新的な企業へと成長させました。
事業全体を「選択と集中」することはもちろんですが、社員一人ひとりが自分の仕事を「選択と集中」して効率化することで、業務効率は驚くほど改善します。
8割の仕事は無駄であるという事実
毎日8時間の仕事をしている場合、もしかするとその中で本当に意味のある仕事というのは1時間程度に集約されているかもしれません。
一日の仕事内容を細かく書き出し、
- 緊急かつ重要
- 緊急ではないが重要
- 緊急だが重要ではない
- 緊急でも重要でもない
という4つに分類します。
上記は時間管理マトリクスという表で、有名な著書「7つの習慣」(スティーブンR.コヴィー)などで取り上げられています。
時間管理マトリクスで分類していくと、本当に必要な仕事は全体の2割程度で、残り8割の仕事は必要ではないことに気づきます。いわゆる「パレートの法則(8対2の法則)」というやつですね。
パレートの法則(8対2の法則)
全体の数値の大部分は、全体を構成するうちの一部の要素が生み出している。
例)
全体の2割程度の高額所得者が社会全体の所得の約8割を占める。
仕事の成果の80%は費やした時間の20%から生まれる。
全商品の2割が8割の売上を作る。
全顧客の2割が全体売上の8割を占める。
このうち、必要ではない8割(上記の図でいう③と④)の仕事については「やめてしまっても問題ないのできっぱりやめる。または他人に任せる」のどちらかの選択をとります。
これまで必要として毎日やっていた仕事を止めることには抵抗がありますが、不必要なことに時間を割いても生産性は上がらないので、きっぱりとやめてしまいます。この「捨てる」という行動こそが生産性を向上させるキーワードでもあります。
そして、空いた8割の力を本当に必要な2割に注ぎ込む。こうすれば2割の必要な仕事が圧倒的に輝きを増すと思いませんか?
たくさん抱えることは日本人の美徳とされてきた
業務効率化を実現する上で「捨てる」ことが大切だということは頭でわかっていても、なかなか捨てられないという方も多いと思います。
この背景には、日本人ならではの「たくさん抱えることが美徳である」という文化にあります。
- 仕事をたくさん抱えて忙しそうにしていること
- お金を使わずに将来に備えて貯めておくこと
- 多くのものを持っていること
- 捨てることはもったいない
いずれも、日本ではありがちな考え方ですが、欧米諸国のワークスタイルからすると「なんでこんなに非効率なことをするのだ?」となるわけです。(たしか、厚切りのジェイソンさんがこんな感じのことを言っていました)
何を捨てて何を残すか
では、具体的にどのようなものを捨てて、何を残せばよいのかを考えてみます。残すべきものの基準は
- 法律やルールで必ず残さなければならないもの(義務化されている)
- 一週間以内に使うもの
- これがないと業務上の支障が出るもの
の3つです。この3つは残すべき内容です。
一方で、
- もしかするといるかもしれない
- 将来的に必要になるかもしれない
と言った具合に、現時点では不要だが将来的に必要になる可能性があるかも?と思えるようなものはすべて捨ててしまいます。
また、人から何かを受取る時も「持っておいて損はないかも」というレベルのものは受け取らないようにします。
大切なのは、今必要な物を必要なだけ調達する能力です。今必要ないものは受け取らないし保管もしない。必要になった時に改めて調達する。これが捨てるかどうかの判断基準となります。
大切なことに時間を集中しよう
将来必要になるかも?というものはすべて捨てる。それが本当に必要になった段階で、フルパワーでそれに取り組む。
過度な分散は禁物で、常に少数の部分に多くの力を使うことが「選択と集中」であり、成功を納める重要なポイントです。
例えば、倒産寸前だったアップルにスティーブ・ジョブズが復帰した時も、製品のラインナップが多すぎるという理由で、多くの製品を廃止にしました。
このときアップル社は製品が40種類もありました。
ジョブズは経営陣をオフィスに呼び、ホワイトボードに大きな「田」の字を描き、その上に「消費者」「プロ」、横に「ポータブル」「デスクトップ」と書き入れました。
ジョブズは言いました。「コンピュータは4種類。ノートが2種類、デスクトップが2種類。それぞれ消費者向けとプロ向けを1種類つづ」
多くの製品があることは、消費者の選択を迷わせ、購買意欲を低下させます。また、多くの製品を作るために開発コストや時間が分散し、中途半端な製品しか創りだすことができなくなります。
多様化する顧客ニーズに答えようとした結果、それが逆効果になってしまうこともあるのです。
話は少しずれますが、投資の世界で最も著名であり世界トップクラスの大富豪でもある「ウォーレンバフェット」氏は、特定の銘柄に集中して投資を行うスタイルで富を築きました。
投資の世界でもビジネスの世界でも、「分散投資、リスク分散、卵を一つのカゴに盛ってはいけない」という言葉を耳にすることが多いです。
投資に関して言えば、15銘柄で分散の85%は達成され、30銘柄あれば95%まで上げることができます。50銘柄とか100銘柄に分散投資をしてもパフォーマンスが落ちるだけで、過度なリスク分散はかえってマイナスとなってしまいます。
分散することでリスク低減が図れるという考え方は正しいのですが、現実では「選択と集中」をしている企業・投資家が大成功を収めているのです。
ビジネスで成功を納めるのであれば、まずは8割の仕事を捨てること。これが業務効率化への第一歩です。
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