【テンプレートあり】法人の登記先住所の変更(本店移転登記・管轄内移転)の手順をわかりやすく解説
執筆者:川原裕也 更新:
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法人では、本店所在地を移転すると、登記簿謄本(履歴事項全部証明書など)の内容を書き換えるため、本店移転登記が必要です。
今回は、「本店移転登記」の中でも「管轄内移転(移転前と移転後で管轄の法務局が変わらない場合)」に絞って、変更手続きの方法を解説します。
大まかな手順としては、
- 変更登記に必要な書類を作成
- 作成した書類を法務局に提出
- 登記変更の手続き完了
となります。すべて郵送での手続きが可能です。
ちなみに、本店移転登記(管轄内移転)にかかる費用は3万円です。 ※定款変更の有無に限らず3万円
郵便局や法務局などで3万円分の収入印紙を購入し、提出書類に収入印紙を貼って提出します。
管轄内移転か、管轄外移転かを確認する
法人の住所変更では、「管轄内移転」か「管轄外移転」かによって、作成する本店移転登記申請書の様式が異なります。
ここで言う「管轄」とは法務局のことです。
会社の移転前の住所の管轄法務局と、移転後の管轄法務局が同じなら「管轄内」、違えば「管轄外」です。
例えば、神奈川県で活動していた会社が、千葉県に移転した場合「管轄外移転」となります。
一方で、千葉県内での移転(例えば、千葉県市原市から千葉市に移転した場合)は、管轄法務局が同じですので「管轄内」となります。
下記に調べ方を示します。
法務局:管轄のご案内ページにアクセスし、移転前の都道府県と移転後の都道府県の管轄の法務局がどこなのか確認します。
上記ページの「商業・法人登記管轄区域」の部分を見ると、「大阪市(全区)、枚方市、寝屋川市、交野市、守口市、門真市」は、「大阪法務局(本局)」が管轄しています。
画面を少しスクロールするとわかりますが、「吹田市、高槻市、茨木市、摂津市、三島郡島本町、池田市、豊中市、箕面市、豊能郡(豊能町、能勢町)」は「大阪法務局(北大阪支局)」の管轄です。
よって、大阪市内の移転や、大阪市から枚方市などへの移転なら「管轄内」ですが、同じ大阪でも、大阪市から吹田市への移転は「管轄外」となります。
もちろん、大阪から兵庫県など、他府県に移転した場合も「管轄外」です。
この記事では、「管轄内移転」の場合で解説します。(管轄外移転は別記事にて取り上げます)
定款の変更有無の確認
続いて、定款の変更が必要かどうかの確認を行います。
定款は、法人設立時に作成した、法人の概要を記載した書類です。
定款の中に「(本店の所在地)当会社は、本店を ◯◯◯ に置く」という一文があると思います。
例えば「本店を千葉県市原市2-3-5に置く」としていた場合、市原市内の移転でも住所変更時に定款の書き換えが必要です。
一方で「本店を千葉県市原市に置く」としていた場合、市原市内の移転なら、住所が変わっても定款の変更は不要です。
私の場合、会社の定款は「当会社は、本店を 大阪府大阪市 に置く」と記載していますので、大阪市内であれば、北区から中央区に移転しても、港区から西区に移転しても、定款の変更は不要です。
変更後の定款は提出不要
定款の変更が必要となった場合、定款内に記載の「(本店の所在地)当会社は、本店を ◯◯◯ に置く」の部分を書き換えます。
しかし、書き換えた定款(変更後の定款)は、提出する必要はありません。
書き換えた定款は、自社内で保管しておくだけです。
その代わり、定款の変更を行ったことを証明するために「株主総会議事録」をあわせて法務局に提出します。
つまり、「定款の変更を行いましたよ。」という内容が記載された株主総会議事録を、法務局に提出することをもって、定款の変更手続きが完了するわけです。
提出書類の一覧
本店移転登記(管轄内移転)は、提出書類はとても少ないです。
管轄内移転で必要な書類
必要書類 | 定款変更 あり |
定款変更 なし |
---|---|---|
本店移転登記申請書 | ◯ | ◯ |
株主総会議事録 | ◯ | – |
取締役の過半数の一致を証する書面 | ◯※ | ◯ |
※「取締役の過半数の一致を証する書面(取締役会議事録など)」は、株主総会議事録の中で移転先と移転日を明確にしておけば不要です。
本店移転登記申請書の作成(テンプレートあり)
本店移転登記申請書にはひな型が用意されています。
商業・法人登記の申請書様式ページから「第1 株式会社」の「3 商号・目的の変更,本店移転」の項目を確認。
ここの「株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所内移転)」という項目に、記載例、PDF、Word形式などの申請書様式があります。
記載例を見ると長々といろいろ書いてありますが、「管轄内移転」なら3ページか4ページ程度の書類で済みます。
下記は、管轄内移転(定款変更なし)の場合のテンプレート(ひな型)です。むだな部分をすべて省いていますので、使いやすいと思います。
必要に応じて社名や代表者名、移転の年月日などを書き換えて使ってください。
添付書類の「取締役会議事録」とは、「取締役の過半数の一致を証する書面」のことです。
▼ダウンロードはこちら
【テンプレート】株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所内移転・定款変更なし)(Word形式)
- 1ページ目:株式会社本店移転登記申請書
- 2ページ目:株式会社本店移転登記申請書の続き
- 3ページ目:収入印紙を貼り付けるページ
- 4ページ目:添付書類:取締役の過半数の一致を証する書面(取締役会議事録)
という構成です。
定款の変更が必要な場合は、下記のテンプレートを使ってください。同じく、むだな部分はすべて省いています。
▼ダウンロードはこちら
【テンプレート】株式会社本店移転登記申請書(管轄登記所内移転・定款変更あり)(Word形式)
- 1ページ目:株式会社本店移転登記申請書
- 2ページ目:株式会社本店移転登記申請書の続き
- 3ページ目:収入印紙を貼り付けるページ
- 4ページ目:添付書類:株主総会議事録
という構成です。
本来であれば、定款の変更を伴う場合は「本店移転登記申請書・株主総会議事録・取締役の過半数の一致を証する書面(取締役会議事録など)」の3点セットが必要です。
しかし、株主総会議事録の中で移転先と移転日を明確にしておけば、取締役の過半数の一致を証する書面(取締役会議事録など)は添付する必要がないため、実質的に「本店移転登記申請書・株主総会議事録」の2点のみで申請することができるようになっています。
一方、定款の変更が必要ない場合は、株主総会議事録が不要な代わりに、「取締役の過半数の一致を証する書面(取締役会議事録など)」の添付が必須となります。
綴じ方と提出先
書類の作成が終わったら、
- 株式会社本店移転登記申請書
- 収入印紙を貼り付けるページ
- 添付書類(株主総会議事録や取締役会議事録など)
の順番にし、上下2箇所をホッチキスで留めて、ページとページの継ぎ目に代表者印を割り印します。
提出書類が完成したら、管轄の法務局に提出します。提出先となる法務局の住所はこちらで確認できます。
現地に出向いてもいいですし、郵送でも提出を受け付けてくれます。
あとは結果を待つのみ、ミスしてもOK
法務局に書類を提出し、問題がなければ1週間程度で登記簿謄本(履歴事項全部証明書など)のデータが書き換わります。
書類に不備があった場合は電話がかかってきて、問題箇所を指摘してくれるので、ミスしても全く問題ありません。言われた通りに修正して再提出すればOKです。
問題がない場合は、特に法務局から連絡や通知が行われることはありませんので、自分自身で変更登記が完了したかどうかを確認する必要があります。
確認方法は主に2種類。
最も簡単な方法は、「国税庁法人番号公表サイト」で自分の会社名を検索してみることです。
変更登記が完了していれば、「所在地」の部分が新住所に書き換わっており、「変更履歴情報等」の部分で変更履歴の詳細が確認できます。
もう1つの方法は、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)・印鑑証明書・納税証明書をネットで取る方法で解説した「登記ねっと 供託ねっと」や、「登記情報提供サービス」で確認する方法です。
こちらの方法は事前登録が必要ですが、実際に登記簿謄本のデータを取得したり、原本を取り寄せたりすることが可能です。
別記事で、本店移転の登記が終わった後の、行政機関や市区町村への提出書類もまとめます。
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