ワン・シング 一点集中がもたらす驚きの効果を読んで学んだこと
執筆者:川原裕也 更新:
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どれだけ巨大な企業でも、経営しているのはたった1人の人間です。
そして経営者が人間である以上、ごく一般の経営者である私たちと、なんら変わらないはずです。
それなのに、なぜこれほどまでに圧倒的な差が付くのか。
それは、世界のトップ経営者は常に、その時一番大切な1つのことに集中し、残りを他の幹部や社員に任せているからです。
世界を代表する企業ともなれば、やるべきこと、解決すべき問題が山積みであることは容易に想像できます。
しかし、経営者がそれらの問題のすべてに直接関わっていては到底、革新的な商品は生み出せません。
だからこそ、経営者は「自分だからこそできる1つのこと」を見つけることからスタートすべきなのです。
そしてそのためには、今抱えている多くのことを「捨てる」ことが最初の一歩となります。
8個のドミノを1.5倍のずつ大きくして等間隔に並べます。そうすると、わずか5センチの高さのドミノを1つ倒すだけで、最終的に子どもの背丈ほどのドミノを倒すことができるそうです。
一番大切な1つのことを見つけ、そこに力を注ぎ込むことが大きな問題を解決するための最善策になることは、多くの人が気づいていない真実です。
これはビジネス用語でも「KSF = Key Success Factor」などと呼ばれていますよね。
マルチタスクは今すぐやめて1つの的に絞り込む
パレートの法則(通称8対2の法則)をご存知でしょうか?
売上の8割は2割の顧客が生み出している。だからこそ2割の顧客によりよいサービスを提供することが売上を伸ばす効果的な方法だ。という考え方です。
そして、この2割の顧客の中だけで考えると、そこからさらに8と2の顧客に分かれます。そうやってどんどん的を絞りんだところの究極系に、問題の本質が隠されています。
すべてをカバーしようと思って「あれもこれも重要だ」と考えてしまうと時間がどれだけあっても足りません。マルチタスクは結局なにも生み出すことができず、良い成果に繋がらないことは、偉大な経営者や投資家もこぞってアドバイスしていることです。
例えば、世界一の大富豪である投資家のウォーレン・バフェットはこのように発言しています。
「まず、この先数年、あるいは死ぬまでに達成したいことを25個書き出す。次に、その中で特に重要なものを5つ選んで丸をつけるように」
「丸をつけなかったものはすべて『絶対やらないリスト』に入れるべきだ。残りの20個がなんであれ、トップ5を達成するまで一切考えてはならない」
また、元々Googleの幹部でありその後米国Yahoo!のCEOとなった女性経営者のマリッサ・メイヤーはこのように、物事に優先順を付けることの大切さを説明しています。
「ToDoリストを毎日つくって、もっとも重要であるタスクとそうでないタスクを上から順番に並べて、一番下のタスクまで行き着かないという事実を喜ぶようにするのです。
なぜって、もし一番下のタスクまでこなしていたら、毎日あまり重要でないことのために多くの時間を割くことになるのですから」
いずれも、本当に重要なことを見つけ、まずそれから着手する。それが終わるまで他のことはやる必要がないという考え方です。
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習慣を身につけるには66日かかる
人が習慣を身につけるには66日かかると言われています。
マルチタスクをやめて、優先される1つのことから始めるという習慣はぜひ身に付けておきたいスキルです。
しかし、これまでやってこなかったこと(習慣ではなかったこと)を66日も続けるのは相当ハードルが高いことだと思います。
だからこそ、多くの人が経営の勉強をしようと思っても続かない、ジムに通ってみても続かないというように、途中で挫折してしまうのです。
そもそも、人の精神力は弱いものですから、66日も続けることに無理があると言えるのかもしれません。
ここでも、ワン・シングの考え方は役に立ちます。
良い習慣を身につけるために「習慣付けたいことを1つに絞る」のです。
「経営の勉強もダイエットも両方やる」という、全部やろうでは結局なにも得られません。
ダイエットをしてきれいな体型を作ることが最優先なのであれば、ダイエットのことだけを集中して考える。これが大切です。
そして66日後にジムに通う習慣が身についたら、そこで初めて次の習慣づくりに移行します。そうして、1つ1つ良い習慣を増やしていくのです。良い習慣を1つ身につけると、そこが次の目標へ向かう足がかりとなります。
目標を設定して定期的に振り返ることの大切さ
良い習慣を身につけるためのもう一つのヒントがあります。
それは、目標を設定し、紙に書き出して定期的に振り返ることです。振り返りのタイミングは「毎週1回、1時間」が望ましいです。
自分の目標を書き出している人は、そうでない人と比較して成功する可能性が39.5%増加すると言われています。さらに、目標の進捗を他人に伝えるようにした人の目標達成率は76.7%に増加します。
孫正義 「リスク」を「成功」に変える28のルールでも書きましたが、ソフトバンクの孫社長がいう目標とは「数字と期限」の設定が不可欠とのことです。
ダイエットだったら、「◯月◯日までに体重を◯キロに減量する、そのためにジムに週3回は通う、ジムでは60分のジョギングを時速10キロで行う」といった具合。目標設定は具体的であれば具体的であるほど良いです。
「設定した目標と現在の自分の位置との距離」を定期的に確認することも、目標達成率を高める秘訣です。
目標の達成率を高めるためにやるべき3つのこと。
- 目標は1つに絞る
- 目標には数字と期限を設ける
- 目標と現在の位置との距離を定期的に振り返る
ノーと言える人になろう
1%のことに的を絞るということは、その他の99%の物事に対して「ノー」を突きつけるということです。
いわゆる「断れない人」が成功できないのはあたりまえです。断れない人は他人から持ち込まれた仕事をすべて引き受けてしまい、結局自分がやるべき重要なことを1つも達成できません。
投資家のウォーレン・バフェットには毎日のように新規の投資案件が持ち込まれます。彼はその中の99%に「ノー」という判断をくだし、本当に価値があると思う1%の企業に投資をし続けた結果、大成功をおさめています。
職業「投資家」なのに99%の案件に投資をしない。その行動は周りから見ると「この人は投資家ではない」かのように思われるでしょう。
99%のことに「ノー」というわけですから、ほぼすべての提案・誘いを「断る」ことになります。他の人からすれば「あの人は断る人」というレッテルを貼られてしまい、それは決してよい印象を与えないでしょう。
しかし、世の中で大きな成功を収めている人は、そんなことはお構いなしに「ノー」と言うことができた人なのです。
今日読んだ本。
追伸:
以前、とある動物園に行った時、私の心に残ったエピソードをお話します。
私は昼間に動物園に行きライオンを見たのですが、まったく動かず物足りないと感じました。ライオンと言えばサバンナを駆け巡って獲物を仕留めているイメージだったからです。
ライオンはもしかすると夜行性なのかもしれないと思った私は、後日、同じ動物園が期間限定で開催していたナイトズーに足を運びました。同じく、ライオンは動かずただ座っているだけでした。
私はそこで1つの看板の文字を見つけました。
そこに書かれていた内容が「ライオンは必要最小限の動きをする」という一文です。
(百獣の王である)ライオンは、必要最小限の動きしかしません。昼でも夜でも微動だにせず、獲物を狩る時だけ瞬発的に動く。これが百獣の王が取る行動です。
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