個人事業主と株式会社・合同会社の違いをわかりやすくまとめてみた
執筆者:川原裕也 更新:
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自営業を始める時に、個人事業主にするかそれとも最初から株式会社などの法人を設立するか迷いますよね。
また、個人事業主である程度の結果を出すことができ、法人成りを検討する人もいるでしょう。
そのような時に必ずと言っていいほど直面する問題が「個人事業主と株式会社、合同会社の違い」についてです。
特に自営業者は税金との絡みもありますから、どの形態がもっとも節税できるのか、費用負担が少ないのか?といった点も気になると思います。
今回は、個人事業主と株式会社・合同会社の違いをわかりやすく解説します。
私自身も過去にすごく悩んだ内容ですので、参考になれば幸いです。
個人事業主と株式会社・合同会社を比較
個人事業主・株式会社・合同会社の3つの形態ですが、まずイメージで理解するこのような感じです。
個人事業主
もっともハードルが低く費用負担も小さい。誰でもなりやすい。
株式会社
大小の違いはあれど、大企業と同じ形態であり信用が大きい。一方で、社会的責任も大きく費用負担も大きい。
合同会社
知名度が低くマイナーな存在だが、会社であり株式会社よりも費用負担が小さい。
表で比較してみると以下のようになります。
ちなみに、個人事業主も株式会社も合同会社も代表者1名で設立することが可能です。
形態 | 個人事業主(青色申告) | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|---|
資本金 | 不要 | 1円以上 | 1円以上 |
設立にかかる費用 | 0円 | 約25万円 | 約10万円 |
経費として認められる範囲 | 狭い | 広い | 広い |
繰越欠損金 | 3年 | 7年 | 7年 |
税金 | 個人の所得税など | 法人税など | 法人税など |
責任の範囲 | 無限責任 | 有限責任 | 有限責任 |
決算手続 | 比較的簡単(確定申告) | 煩雑 | 煩雑 |
決算 | 12月末 | 自由 | 自由 |
社会保険 | 国民健康保険・国民年金 | 社会保険・厚生年金 | 社会保険・厚生年金 |
つづいて、それぞれの特徴についてまとめます。
個人事業主
個人事業主は、わかりやすく言うとフリーのデザイナーさんや町の八百屋さんのイメージです。
開業するのが最も簡単で、事業スタートにあたっての費用負担は0円です。開業届を提出するだけで誰でもすぐに個人事業主になることが可能です。
また、企業で言う決算申告は個人事業主では「確定申告」となるため、手続きも比較的簡単です。
その敷居の低さから、どれだけ利益が出ても法人成りをせずに、個人事業主のままでいる方もいます。
デメリットとしては、事業の利益と個人の利益が同じになることです。つまり、事業のサイフと個人のサイフが同じであるため、銀行融資を受ける際にも厳しく見られます。
また、所得税は段階的に税率が上がる仕組みとなっているため、一定の所得を超えると法人税よりも税率が高くなってしまい、税金面で不利になります。また、節税策が限定されることや、法人では経費算入OKなものが認められないなど、節税の面でも不利です。
その他の大きなデメリットとして、個人事業主は国民健康保険・国民年金への加入となるため、保険料は安いのですが保障が薄いという心配もあります。
事業規模が小さいうちは費用負担の小さい個人事業主が有利ですが、規模が拡大するにしたがって様々な面で不利になっていきます。
個人的に気になるのが、個人事業主の「無限責任」というルールです。事業によって何か大規模な損失が発生した場合、そのすべての責任を個人が負うことになります。
株式会社
株式会社は最も一般的な事業形態ですが、資本金によって「中小企業」と「大企業」に分かれます。
資本金が1,000万円・1億円を超えるようになると、負担が大きくなったり制限が課せられたりしますので、個人事業主の延長として法人を設立するのであれば、資本金は1,000万円以下に抑えておくことが理想です。
ちなみに、現在は資本金1円でも会社は設立できます。(資本金を1円にしても設立費用は最低25万円程度かかります)
会社設立にあたっては、定款の作成や法務局への登記などの手続きが必要となるため、ややこしいです。
また、法人は赤字であっても最低7万円程度の維持費がかかるため、個人事業主と比べて費用負担はかなり大きいです。
決算申告も内容が煩雑になるため、代表者が決算書の作成を行うのにはかなりの労力が必要です。
一方で、赤字が7年繰り越せたり、経費に組み入れられる費用の範囲が広がるなどのメリットがあります。
法人は会社で得た利益の中から、役員(経営者)や従業員に給料を支払うという仕組みになっているため、事業のサイフと個人(経営者)のサイフを分離できます。
利益を分けることによって、個人事業主と比較して、トータルでの税金が安くなるので、法人成りによって会社の利益と役員の利益を分散して節税する目的で会社を作る方も多いです。
また、役員や従業員は厚生年金に加入することができ、保障も手厚くなります。
事業が軌道に乗っていない段階では、費用負担が大きい分、法人が不利と言えますが、事業が一定規模になれば法人の方が信用面を含め有利になっていくという構図です。
株式会社は「有限責任」と言って、大規模な損失が発生しても、責任は資本金の範囲内に収まります。例えば、最悪の場合、会社を精算してしまえば代表者がそれ以上の責任を負う必要はありません。(個人保証などをおこなっていない場合)
合同会社
最近なにかと人気の合同会社は、基本的に株式会社と変わりません。
決定的に大きなメリットとして、設立費用が安いというものがあります。
株式会社の設立には25万円程度が必要ですが、合同会社の場合は6万円で設立できます。
設立時にかかる費用が安いことから、個人事業主から小規模法人への法人成りをする人が、合同会社を選択するケースも多いです。
また、株式会社は決算公告義務があるため、官報などに情報を掲載する際に毎年6万円がかかります。(と言ってもほとんどの中小企業はこの義務を守っていませんが…)
一方で、合同会社には決算公告義務がないため、この費用は不要です。
ただし、社会的な認知度や信用面においては株式会社には劣ります。「株式会社」を知っている人は多いですが、「合同会社」を言うと「なにそれ?」という方も多いのが現実です。
事業規模と社会的信用によって選択するのがおすすめ
それぞれの事業形態によってメリット・デメリットがあります。
選択する上での基準として考えたいのが、
- 事業規模
- 社会的信用が必要か
という点です。
これからビジネスをスタートさせる場合、上手くいくかどうかわからないうちは「個人事業主」がおすすめです。
なぜなら、費用負担が最も小さく、そしてもし上手く行かなかったとしても廃業の手続きが簡単だからです。法人の場合、上手くいかない場合は「精算」する必要がありますが、精算の手続きは非常に煩雑なので、プロに依頼するのにもお金がかかります。
しかし、取引先との関係上、どうしても社会的な信用が必要だったり、会社を大きく成長させていきたいと考えている場合は、最初から会社を設立するケースもあります。事業規模が大きくなれば間違いなく法人の方が有利だからです。
もちろん、最初は個人事業主からスタートして、事業がある程度軌道に乗った段階で「法人成り」という形で会社を設立するのも良いと思います。
次の記事:法人化するなら合同会社の方が安いがそれでも株式会社を選択すべき理由
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