社長は会社を「大きく」するな!を読んで学んだこと
執筆者:川原裕也 更新:
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自分が事業をやっている目的、または会社を起こそうとしている目的を考えたことがありますか?
世の中には「事業家」「社長」「起業家」などが一括りにされている風潮がありますが、社長という言葉一つを取っても、上場企業の社長から一人会社の社長まで幅広く存在します。
そして、それぞれ事業を営む目的も違います。
職場に馴染めなくて生活のために独立したという人もいれば、家業を継いだ人もいるでしょうし、歴史ある会社で社員から社長に成り上がった人もいます。
そして、世界を変えるために事業を起こすという志の高い人もいるでしょう。
私自身は、元々まったく働いていない状態から現在の仕事でお金が稼げるようになったので、その流れで独立しました。高い志もなにもありません。
しかし、継続して仕事をやっていく上で、社会に対して何か役立つことはできないかと考えるようにもなりましたし、いつの間にか従業員も雇い、自然な流れで会社の規模も拡大しています。
なぜ会社を大きくする必要があるのか
利益が出るとより大きなことにチャレンジできますし、より大きな利益を生み出したいという成長意欲がある経営者に、「事業拡大」という言葉が生まれるのは自然なことです。
しかし、明確なビジョンを持って「なぜ会社を大きくするのか?」という問いに答えられなければ、やがて大きな失敗を招いてしまう可能性すらあるのが、経営の怖いところです。
なぜなら、事業規模が大きくなるほどコントロールが難しくなりますし、経営環境への柔軟な対応が難しくなるからです。
創業時に必要最小限の人数でビジネスが回るのであれば、その状態がもっとも経費を抑えた経営ができるはずです。会社を大きくすると管理コストがかさむので、どうしても粗利が減ります。
事業を拡大する上で忘れてはならないのは「効率的な経営ができているか」を常にチェックする姿勢です。
一人あたりの粗利が2,000万円稼げるか
効率的な経営ができているかどうかを確認するには、「一人あたりの粗利」を見ます。
売上に対して原価は必ず必要なものであり、原価を差し引いたものが粗利(売上総利益)です。
これを、社員数(社長の人数も含む)で割って計算します。
「一人あたりの粗利」は会社のサイズに関係なく比較できるので、効率的な経営ができているかどうかを見る目安になります。
一人あたりの粗利の目安
- 非上場企業:1,000万円
- 上場企業:1,500万円
- 目指すべき数値:2,000万円
一人あたりの粗利を改善するには社員数を減らすこと
一人あたりの粗利が2,000万円には到底及ばない。
このような状態だと、経営環境が悪くなった時に会社が危険な状態に陥る可能性があります。
社員数10名~30名程度の中小企業は環境が良い時は儲かりますが、経営環境が悪くなると、一気に苦しくなると言われています。
だからこそ景気が良い時に「一人あたりの粗利」を意識した体質にしていくことが重要です。
では、「一人あたりの粗利」を改善するにはどうすればよいのでしょうか。その方法は単純で、
- 粗利率を上げる
- 従業員数を減らす
の2つを実行することです。
このうち「粗利率を改善する」方法は地域・業界を絞った「小さなナンバーワン」を目指すことで実現できます。俗にいうランチェスター戦略というやつですね。
もちろん、少しでも粗利率の高いビジネスモデルにシフトしていくことも重要です。
そして「従業員数を減らす」ことで会社の規模を小さくすれば財務体質は改善できます。
とはいっても、社員を簡単にはリストラできませんので、新規採用をせずに自然に減っていくのを待つ方法が得策です。
従業員数の自然な減衰に合わせて仕事の量も減らす。
当然ながら会社の売上・利益は減っていきますが、利益の絶対数が減っても「一人あたりの粗利」が改善すれば会社は存続できます。
また、従業員数が減ると小さな事務所に移転できるので、固定費が一気に改善します。
従業員数が足りない分はアウトソーシングをするなどし、固定費を減らして変動費化することで「持たない経営」を実現します。
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なぜ節税をすると会社にお金が残らないのか
事業で利益が出ると、社長の意識はどうしても「節税」に向かって行きます。日本の法人税って本当に高いですから…
しかし、節税に繋がるからと言って無駄に車を買ったり、飲み歩いたり、散財をすることはおすすめしません。
社長がお金を派手に使うようになると、なかなか会社にお金が貯まりません。また、儲からなくなっても生活水準は簡単に元には戻せないものです。
プロフェッショナル ミリオネア 年収1億を生む60の黄金則という本にも書いてあった内容です。
私の元顧客に、Mさんという経営者がいる。Mさんは人材派遣ビジネスで成功し、創業四年で年商100億円、年収2億7,000万円を稼ぐまでになった。
ところが、そこで魔がさした。本業以外でミャンマーに進出するというギャンブルのような事業をはじめてしまったのだ。
けっきょく、信頼していた部下の裏切りも重なって、本業もろとも会社を破綻させてしまった。だが、Mさんほどの能力があれば、その気になれば再起も可能だ。
原点に立ち戻って、また人材派遣ビジネスをはじめればいいのだ。私はそう見ていた。 しかしMさんはそうしなかった。
それどころか、高級ブランドの服を身につけて、私のところに借金をしにきた。一度覚えた贅沢な暮らしを捨て切れないのだ。
どんな社長であれ、こんな姿にはなりたくないですよね。。。
会社にお金を残すためには「節税しない」という選択以外に方法はありません。
私が金融機関の担当者から聞いた話で一番心に残っているのは、「税金を払ってキャッシュを残す企業は成長スピードがぜんぜん違う」という一言です。
節税をせずに税金を払う決断をすれば会社にお金が残るし、会社にお金が残ればそれが次の成長余力となります。
一人あたりの粗利を改善できたら、粗利を「給与4:経費4:利益2」でわけます。
お金をきちんと残す経営を続けていれば、貸借対照表がきれいなものとなり、財務体質が強化されていきます。
バランスシートの大きい・小さいに関わらず「きれいなバランスシート」を作り上げていくことが、強い会社を作る上では重要なことです。
上場企業でも業績が悪化すると「バランスシートのスリム化」をして経営効率の改善を目指しますが、多くの場合その改善には相当な時間を要しています。
やってしまいがちな5つの散財
最後に、本書で取り上げられていた「やってしまいがちな5つの散財」をまとめます。
1.人を増やす
2.借金して事業拡大を目指す
3.一等地などにオフィスを引っ越しする
4.リースなどでオフィスの設備投資をする
5.大々的な広告宣伝をする
いずれも、お金を使った力技でなんとかしようとすることで無理が生じてしまう例ばかりです。
特にお金が借りやすい状況(信用が拡大する局面)では、こうしたお金を使った力技に頼ってしまいがちです。
しかし、お金は無限に借りられるものではなく、信用の扉が閉じてしまった時に、経営効率が悪ければ、それが大きな反動となって返ってくるのです。
人を増やすことも広告宣伝をすることも、「効率的に無駄なくやれているか?」が大切です。
私が昔、Twitterで見かけて印象に残った言葉も載せておきます。
うさみのりや @zettonu · 5月15日
起業しようとする友人が見事にお金の使いどころを間違えていて、またそれが自分と同じような間違え方で、人間は似たような間違いを犯すのだと感じた。「とにかく人と賃料に金使うな、固定費を最大限削減しろ、資本金はアセットに使え」と説教しといた。
人件費とそれに伴う賃料は会社に大きな影響を与える固定費です。従業員は会社の自然な拡大に合わせて常に必要最小限に留める。そして固定費を削減し、お金を効率的に生み出してくれるアセット(資産)に投資する。
上場を目指すスタートアップベンチャーの経営となると話はまた別なのでしょうが、中小企業や小規模事業者にとってはこのような考え方が大切だと思います。
今日読んだ本はこちら。
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